リボミック(4591)は、核酸アプタマーに特化した創薬ベンチャーで、いわゆる「次世代抗体」のような位置づけの技術を武器に、希少疾患などをターゲットにしています。
一方で、売上ほぼゼロ・赤字継続・資金調達は主に株式発行という、典型的なハイリスク・ハイリターンのバイオ株でもあります。2025年3月期までで赤字は11期連続、2026年3月期も最終赤字拡大見通しとされています。
ここでは、
- 事業・パイプラインの現状
- 2030年前後を見据えたポジティブ/ベース/悲観シナリオ
- それが株価イメージにどうつながり得るか
を、あくまで予測・シナリオとして整理します。
※特定銘柄の「買い/売り」を推奨するものではなく、投資判断は必ずご自身でお願いします。
1.リボミックの現在地をざっくり整理
(1)ビジネスモデルと技術
- 核酸アプタマー(RNAの一種)を用いた分子標的薬の開発に特化したバイオベンチャー
- 東京大学医科学研究所発の大学発ベンチャー
アプタマーは「抗体に次ぐ新しいモダリティ」として一定の期待はありますが、世界的にもまだ“主流”にはなり切れていない領域です。うまくいけば差別化要因、失敗すれば「ニッチすぎて乗り遅れる」リスクの両方をはらんでいます。
(2)主力パイプライン:RBM-007(umedaptanib pegol)
現在もっとも注目されているのが、骨系の希少疾患「軟骨無形成症(Achondroplasia)」向けRBM-007です。
- 抗FGF2アプタマー(umedaptanib pegol)
- 小児軟骨無形成症患者を対象に第IIa相試験を実施中
- 2025年時点の情報では、2026年に第III相試験開始を計画と公表
- 日本では希少疾病用医薬品指定も受けています(軟骨無形成症向け)
希少疾患+オーファンドラッグという組み合わせは、成功したときの薬価・収益ポテンシャルが大きい一方、患者数が少ないためデータ量も限られ、開発失敗のダメージも致命的になりがちです。
(3)その他パイプラインと過去の経緯
- 滲出型加齢黄斑変性(wet AMD)向けRBM-007は、複数の第II相試験で、未治療例では有望なデータもあった一方、既に抗VEGF治療歴が長い患者では追加の利点が限定的という報告もあります。
- 以前は網膜疾患、肺高血圧、心不全など複数のテーマの研究も挙げられていましたが、現時点で実質的な「会社の命運がかかっている」のは軟骨無形成症のRBM-007と言ってよい構図です。
(4)財務と株主リスク
- 2025年3月期:事業収益はごくわずか、営業損失約10.5億円・当期純損失約10.1億円
- 2026年3月期も13.5億円の最終赤字見通し(11期連続赤字)
- 中間期も売上ゼロ、研究開発費等で赤字継続。新株予約権行使により約7億円の資金調達を行い、開発費を賄っている状況です。
つまり、
「現金が尽きる前にパイプラインの価値を示す」
「その過程で株式発行による希薄化リスクが常に付きまとう」
という、典型的な創薬ベンチャーの構図にあります。
2.ポジティブシナリオ:RBM-007が“当たり”、提携・承認まで走り切るケース
リボミックが大きく化けるパターンは、ほぼこの1本に集約されます。
(1)ざっくりタイムライン(楽観寄り)
- 2025〜26年:第II試験の最終的な有効性・安全性データで良好な結果
- 2026年:第III相試験スタート(会社計画どおり)
- 2028年前後:主要評価項目で有意差が確認され、トップライン発表
- 2029〜30年:日本 or 海外でまず1地域の承認 → ローンチ
もちろん、これはかなりスムーズに行った場合の“きれいな絵”ですが、バイオベンチャーが大きく評価される典型パターンでもあります。
(2)この場合に起こり得ること
- オーファン指定+希少疾患のため高薬価・安定したニッチ市場が期待できる
- グローバル大手製薬とのライセンス契約(前受金・マイルストン・ロイヤリティ)を結べれば、
- 一気に黒字化・キャッシュフロー改善
- 「単なる赤字バイオ」から、「独自モダリティを持つ収益企業」へと市場の見方が変わる
- その結果、株価としては
- 現在の低位水準から数倍〜一桁台後半の“マルチバガー”も理屈の上ではあり得る
ただしこれはあくまでも「開発が順調に進み、競合との比較でも優位性を示せた場合」の話です。希少疾患領域でも競合開発は進んでおり、「承認されたけれど2番手・3番手でシェアが取れない」という可能性も当然あります。
3.ベースシナリオ:開発継続はできるが、時間と希薄化が重くのしかかるケース
より現実的に見たとき、「順調とは言えないが、即座の崩壊もしない」という中間シナリオもあり得ます。
このシナリオの特徴
- RBM-007のデータは「悪くはないが、決定的に抜けているわけでもない」レベル
- 第III相スタートがやや遅れたり、試験デザインの見直しで時間を要する
- 資金繰りのために
- 新株予約権・公募増資など継続的な希薄化
- 株価が上がっても、増資ニュースで押し戻されるパターンを繰り返す
- IR資料では中長期成長戦略を掲げつつも、数字としては赤字+希薄化の綱渡りが続く
この場合、株価イメージとしては、
- 短期的には材料(試験進捗、提携期待)で急騰・急落を繰り返しつつ
- 中長期のトレンドとしては「低位〜中位レンジでヨコヨコ/ジリ安」となりがち
つまり、「宝くじ性は残るが、持ち続けるストレスも大きいタイプ」の銘柄になりやすいです。
4.悲観シナリオ:臨床失敗+資金難で“実質価値ゼロ”に近づくケース
バイオベンチャーで必ず直視しなければならないのが、この最悪ケースです。
あり得るパターン
- RBM-007の第II/第III試験で
- 有効性が十分に示されない
- 安全性に問題が出る
- もしくは競合薬が先に高い有効性を示し、「市場で勝てない」ことが明らかになる
- 投資家の期待が急速に後退し、株価が低迷したまま
- 追加の大型資金調達が難しくなり、
- パイプライン縮小
- 上場維持や継続企業の前提に対する注記
といった状況に追い込まれる
この場合、
株式価値がほぼゼロに近づく(倒産・上場廃止・極端な低位株化)
というのが、バイオ特有の「フルダウンサイド」です。
バイオ株投資では、「ここまで落ちる可能性がある」ことを最初から覚悟しておく必要があります。
5.株価の“ざっくり未来イメージ”と向き合い方
具体的な株価〇円を断定することはできませんが、リスク/リターンの構造は、おおよそ次のように整理できます:
- アップサイド(成功シナリオ)
- オーファン薬として承認+提携成立+追加パイプライン進展
- → 時価総額ベースでは現状の数倍〜一桁台後半のマルチプルアップも理論的にはあり得る
- ミドル(ベースシナリオ)
- 開発は続くが、時間と希薄化で「上がっては増資で押される」を繰り返す
- → 長期で見るとレンジ相場&ジリ安になっても不思議ではない
- ダウンサイド(悲観シナリオ)
- 主力パイプラインの失敗+資金難
- → 株価は限りなくゼロに近づくリスク
まとめると、「下はほぼゼロ、上は数倍〜10倍級、ただし確率は高くない」という、典型的なハイリスク・ハイリターン構造です。
6.どんな投資スタンスが現実的か
リボミックのようなバイオベンチャーに関しては、一般論として次のようなスタンスが現実的だと考えられます:
- 生活資金とは完全に切り離した、「最悪ゼロになっても諦められる額」にとどめる
- ポートフォリオのごく一部(数%)にとどめる“オプション枠”として位置づける
- IR資料・決算説明会の内容(開発スケジュール、資金残高、提携方針など)を継続的に追い、
- 「どのイベントで勝負がつきそうか」(例:第II/III試験の結果公表)
- 「その前にどれくらい希薄化しそうか」
を自分なりに整理しておく
まとめ
- リボミックは、アプタマー創薬という尖った技術を武器に希少疾患を狙う“小型バイオ”です。
- 事業収益はほぼなく、赤字は11期連続見込み。開発費は主に株式発行で賄っており、投資家は常に希薄化リスクと向き合う必要があります。
- 2030年前後までの未来は、
- RBM-007が成功しオーファン薬として承認・提携に至る「大化けシナリオ」
- 開発は継続するが時間と希薄化で株価は低位もみ合いの「ベースシナリオ」
- 臨床失敗や資金難で実質価値が消える「悲観シナリオ」
の三つ巴で考えるのが現実的です。
したがって、リボミックは
「当たれば大きいが、外れればゼロに近い」
宝くじ型バイオ銘柄
として捉えるのが妥当だと思います。
もしこの銘柄を検討されるのであれば、
- 「どのシナリオの確率をどう見るか」
- 「最悪ゼロになっても良い金額はいくらか」
をまず決めたうえで、IR資料・決算説明会・臨床試験のマイルストンを自分なりに追いかける形が現実的だと思います。
